がん三次元培養に関する研究 (Study on 3D organoid culture of cancer)
近年、三次元の上皮組織構造を培養ディッシュ上で再現する方法としてマトリゲル三次元培養法(オルガノイド培養法)が開発されました。オルガノイド培養法によって、様々な組織の上皮細胞を三次元的に長期培養出来ることが示され、がん研究への応用が始まりました。
当研究室では、前立腺がん罹患犬の尿サンプルを用いて前立腺がんオルガノイドを作製する方法を見出し(Usui et al., Cancer Science, 2017)、このオルガノイドが、生体内のがん微小環境を高いレベルで再現できること、免疫不全マウスの体内で腫瘍を再形成すること、抗がん剤および放射線に対する感受性試験への応用が可能であることを明らかにしました(下図)。
また、ヒト、がんモデルマウス、犬由来の様々な組織(肺、大腸、前立腺、膀胱、海馬)からオルガノイドを作製し、病態解析を行うことで新たながんのメカニズム解明や診断マーカーの開発を目指しています。
薬物動態に関する研究(Study on pharmacokinetics)
当研究室では薬物を投与した様々な動物から採血を行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて血漿中薬物濃度を測定した後に、コンパートメント解析によって数式に基づいた動物毎の適切な投与計画の確立を目指しています。近年、抗菌剤の多用によってさまざまな薬剤耐性菌の出現が問題となっており、多くの動物種での体内動態に関する情報が求められています。私達の研究成果は、これらの課題を解決する一助になる可能性があります。
がん超音波療法に関する研究(Study on cancer ultra sound therapy)
超音波治療はがんにおいて低侵襲かつ低コストな治療法として近年注目されており、私達は、超音波療法の獣医療への応用を目指して研究を行っています(下図)。また、深部領域でも使用可能な新規超音波療法についても開発を進めています。